安心安全な世の中を願って
夏休み明け、お子さま達が元気に幼稚園へ戻ってきたのも束の間、新型コロナウイルスが猛威を振るい、ご父母の皆さま、そしてお子さまには大変ご迷惑をおかけしました。新型コロナウイルスの感染状況は未だ改善されず、10歳未満のお子さまの感染も見られております。また、RSウイルス感染症も流行っている、ということです。一人一人が感染対策をしっかりするとともに、幼稚園での感染対策について再確認し、教職員一同気持ちを引き締めて過ごしてまいります。
さて、新型コロナウイルス感染症の拡大により「利他的」という言葉が多く聞かれるようになりました。「利他的」とは自分のことよりも「他人の利益」を優先する考え方で、「自分自身のため」が先行する「利己的」な考え方と相反する考え方です。実際、現在のコロナ禍において、マスクの着用、外出の自制、人との距離を置いた会話、3密を防ぐ行動が求められており、これらは基本的に、自分自身の行動が他者にどのような影響をもたらすかを考えて行動しよう、自身の行動に責任をもつことが大切など、いわゆる「利他的」思考が求められています。
一方で、この「利他的」の考え方には難しいところがあります。
例えば、「他人の利益」を思って先回りした行動が、実は相手には必要のない行動だった、また自分は親切なつもりで行ったことでも、相手は「自分は信頼されていない」とマイナスに捉えられてしまうこともある、ということです。
ここで大切なことは、相手を思って行う行為は、相手はどう感じるかは分からないし、相手が喜んでくれるとはかぎりません。自分の理想、予想を立てるのではなく、まずは相手のためにという気持ちをもつこと、そして、相手の反応を良くも悪くも受け止めること、そこには自分とはもちろん価値観が違うこともあり、多様性があることを冷静に受け取ることが大切になります。
これは親子の関係でも同じことが言えます。お子さまのためにしていることでも、実は「親の思い通りになってほしい」、「しっかりした子に育ってほしい」という思いが強すぎて、お子さまのできることを先回りしてしまったり、思いを押しつけてしまったりしている可能性もあります。時には思い通りの行動をしなくてもおおらかな心で「こういうこともある」と受け止め、次はどんなことをしてくれるのかな、とお子さまの予想外の行動に期待できるくらいの心の余裕をもつことができるといいですね。
人はそれぞれ状況が違い、思いも環境も、考え方も違います。またその多くは目には見えません。多様性を尊重する「みんなちがって、みんないい」だけではなく、できるかぎり他者の思いに気付き、尊重し、また見えない要素に配慮をし、敬意をもって接することを大切にしていく。そして人はそれぞれいろいろな考え方、捉え方があるという心のゆとりをもって過ごせる、安心安全な状況に一日も早くなることを心から願っております。